酒母(もと)

酒母は、酒造りの全工程のなかの一工程であるお酒を造る時に杜氏をはじめとする造り手がそのお酒にあった優良な酵母を増やす工程です。

酵母という微生物(酵母といってもものすごい種類がある)は、若干ひ弱な所があって外敵(さまざまな雑菌や空中に浮遊している野生酵母など)に弱い為その外敵から守ってあげなければなりません。

そこでその外敵から守るのに登場するのが乳酸なのです。その乳酸の発生方法によって酒母(もと)の呼び名が分かれます。現在行われていておさえておきたい方法は、3つ(速醸もと・生もと・山廃もと)ですが、乳酸の発生方法で考えるとこの3つをまずは2つに分けることができます。

乳酸の発生方法
1.工業的に造った乳酸(醸造乳酸)を入れる方法・・・速醸もと
2.自然に出来上がるのを待つ方法・・・生もと、山廃もと
3つのもとの説明をする前にこの2つの分け方での成り立ちを書きます。それをふまえた上で2の生もとと山廃もとを見ていくと解りやすいかとおもいます。

1.の方法は、そのままの通りで既製品の乳酸を添加する方法です。現在流通している日本酒のほとんどはこちらの方法で造った酒母で造られたお酒です。雑菌の繁殖を抑える状態を比較的簡単につくれます。考案は、1911年です。もとの仕込から14日位で出来上がります。

工業的に造った乳酸を添加すると聞くとえーと思われる方もいると思いますが、一定品質の酒母をとても安全に造れるというメリットが非常に大きいです。この方法が考案される前は、求める酒質にあう安定した酒母が出来るのが難しかったのではないでしょうか。

2の方法は、乳酸菌を発生させてその乳酸菌が生み出す乳酸を利用する方法です。もとの仕込から出来上がりまでは約30日位かかります。単純ですが、はじめの14.5日は乳酸を発生させて雑菌の繁殖をおさえる状態にする期間、そして残りの14.5日間は、酵母を増やす期間ととらえていただいても良いとおもいます。
posted by sakeito | 識(しる)