しいただいたお客様の素朴な質問を一つ。「日本酒って雪国の方が美味しいんだよね」と
確かにイメージはそういうのが強いかもしれませんが、そんな事は決してありません。このイメージは、いつ頃から形成されたものなのでしょうか。昔は、雪で空気中の雑菌が落とされたり、足の裏の雑菌が雪できれいになったりとの効果はあったかもしれませんがね。
今、現在品質の良いお酒を醸造している酒蔵は、場所とかではなく、その酒蔵の舵をとる人(社長など)の考え方などが非常に大きな要素を占めていると思います。例えば、品質の高いお酒を標榜する蔵元と儲かるお酒を標榜する蔵元とでは全く違う酒質のお酒が出てきます。たとえその2つの酒蔵から出てくるお酒が、同じ精米歩合の同じお米の表示がしてあってもです。
蔵元の考え方が大きな要素を占めると書きましたが、今酒蔵を取り巻く環境(都市化)がどんどん変わってきています。例えば、昔は敷地内の地下水で酒造りをしていたが、周りの環境の変化でその地下水が汚染され、仕込水として使えなくなったらどうするのでしょうか。地下水の出る所に引っ越せば良い?とそんなに簡単にはいかないのです。蔵を新しくするとよいお酒が出来るまでに年月がかかる可能性があります。極論ですがよいお酒が出来ない可能性もあるのです。
そこで喜んでいただける品質のお酒を造るために仕込水を遠方から運んでくる蔵もあるのです。当然水道で蛇口をひねるよりは遥かに手間暇がかかりますが、そこに蔵元の考え方が出てくるように感じます。一方、地下水が駄目になった蔵の中には仕込水に水道水を使用する所もあるのです。ただ、水道の普及が腐造(造りの過程でお酒が駄目になる事)を少なくしていった一端を担っていることも事実だと思います。
雪が降って寒い地方のお酒だけが良いというわけではなく、温暖な地方のお酒も良いお酒がたくさんあります。だから、あまり先入観を持たずに選んでいただくと多くの美味しいお酒に出会う事が出来ると思います。もちろん、地域による大まかな味わいの傾向もあります。
「水」 場所より舵取り
posted by sakeito
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