ご報告が遅くなりましたが、2月中旬 福島県浪江町の鈴木酒造店「磐城壽」の蔵を訪問しました。
この時期は、ちょうど造りの真っ最中。造りに搾りにまだまだ大忙しの時期です。精米や麹や酵母は、もうほとんど終わっていて、仕込まれた「もろみ」が静かに、そして激しく活動している最中です。
杜氏も兼ねる若き30代の大介氏の案内で蔵を見せていただきました。
精米機は、今年の精米をすべて終え、また来年のために清掃中。麹室、酒母室も今年の役目を終え、熟気を冷ましているような状態でした。
さて、今回の訪問の目玉「もろみ」を味見させていただきました。
まず、現在入荷中の限定酒「山廃純米生原酒 土耕ん醸」のもろみで使用米が違うタンクが2本あり、1本は「夢の香」を使用、もう一本は「農林21号」を使用した品です。
もろみの経過日数は25日で、もう少しかかりそうです。非常にどっしりとした飲みごたえ十分の味わいです。
次に「華吹雪」という酒米で造った純米吟醸の候補酒の「もろみ」は35日に達していて、そろそろ完成された味わいに近いものでしたが、さらに日数がかかりそうとのこと。
この蔵は、もとみ日数が少し長めなのです。
さらに、仕込まれて10日程の山田に四季35%精米歩合の大吟醸候補のもろみも味見しました。日本酒が独特の並行復醗酵をしていることが十分感じることが出来る「麹になる糖化作用」と「酵母によるアルコール発酵」です。
このもろみは後30日位かかるとのこと。泡の状態、もろみの味、経過日数がとてもよくわかる貴重な体験でした。
「もろみ」の利きを終え、搾り場へ。ちょうど槽には、純米酒が圧をかけられた状態になっていて、槽口から流れ出るお酒は、荒々しくも旨みのある味わいでした。
その後、大介氏、奥さんと、10ヶ月のご子息を交えて酒談義。
2月に出荷する「しぼりたて純米澱かみ酒」(当店ではすべて完売)の候補を同じ米でタンクの違う2種類を味見。搾られた時期が若干違うので、一方はまだガスが多く残っていましたが、「こんなに違うんだ」とあらためて思いました。
一方は、円みがありふくよかで飲みやすいが搾りたての面白みが今ひとつ。一方は、非常にゴツゴツしているが、幅、キレがとてもあり搾りたてらしい味わいでした。
この後、時を忘れて長々とお酒の話。迷惑を顧みず、日が暮れるまで話し込んでしまいました。
磐城壽のお酒は、造り手の気概がそのままお酒に出ていて、じっくりやっていただきたいお酒の1本です。
2003年2月 磐城壽 訪問記
posted by sakeito
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