2005年11月 白扇酒造 岐阜県加茂郡川辺町

20051109147b975b.jpg6日の23:00に出かけて、9日の3:30に戻ったので1泊4日(?)になるのでしょうか。

6日の夜出かけるときは、やっぱり雨。実は私が酒蔵や食品の加工所などへ出かけるときは、その旅程の中で必ず1回は雨や雪が降ります(今まで裏切られた事はない)。そして今回も土砂降りウーンまたしても。

ワイパーをかけながら一路岐阜の美濃加茂市へ。朝A.M8:00に無事美濃加茂I.Cへ到着。そこから車を走らせる事15分位最初の訪問地岐阜県美濃加茂市川辺町にある「白扇酒造」さんに到着しました。「白扇酒造」さんに最初に訪問した時は、高速を降りてから下の道をだいぶ長く走りましたが、今は「東海環状線」という高速道のおかげでだいぶ近くに感じました。

「白扇酒造」は「福来純」という名前の「みりん」を造っている蔵で、日本酒と焼酎も造っています。

皆さんは、「本みりん」を御存知ですか。「みりん」は、醸造酒でも蒸留酒でもなく混成酒という分類に属します。みりんそのものの製造の工程内では醗酵というものは起こりません。「みりん」は、うるち米を使用した麹と蒸したもち米、焼酎を仕込みます。約60日位の期間の内に麹の酵素によりでんぷんやたんぱく質が糖分とアミノ酸分に変化し、独特の風味が出てきます。その後搾りをしてみりんと粕に分け、熟成させます。みりん本来の造りでは、熟成は最低条件です。

200511102abfb3d5.jpg写真は「白扇酒造」のみりんを搾る「フネ」です。
蔵の中を拝見させて頂いた後、加藤専務といろいろなお話をさせて頂きながらいろいろと試飲。以前お伺いしたときも飲ませて頂いたのですが、搾ったばかりのみりんを今回も飲ませて頂きました。これを飲むと昨日書いた「熟成はみりんにとって最低条件」がよーく判ります。色は、薄い黄色がかった色合いで味も一体感がなくてちょっとばらばらという感じ。すごく甘い焼酎を飲んでいる感じといったほうが判りやすいかな。それが3年という月日がたつと黄金色ととろみと甘みが一体化した形で出てくるのです。変な言い方ですが「飲んで美味しいみりんです」

「みりん」は、完全に調味料と思っている方が多いと思いますが、元々は飲み物として生れた品です。調味料として使われだしたのは、江戸時代になってからでうなぎの蒲焼のたれに使われたのが初めてといわれています。戦後になって急速に調味料としてのみだけ発達し、飲み物としてのみりんはすっかり忘れ去られてしまいました。その原因の一つに早く大量に造られるようになって、みりん本来の味わいがなくなってしまった事があると思います。

「白扇酒造」のみりん造りは、みりん本来の仕込みで仕込ます。焼酎も自家製の米焼酎を使用します。もろみ日数は、90日にほどになり、みりんもろみを搾る際は、フネ(みりんもろみを酒袋に入れて横に積んで上から圧力をかけて搾る機械)を使用し、当然みりん粕もでます。みりん粕が出る造りをしている所は、稀有の存在となってしまいました。搾られたみりんは、常温で3年間熟成されこの世に出てきます。今もこの様な造りをしている事に感謝。このみりんがなかったらみりんが美味しいなんて思わなかっただろうな。
いつもながら長々といろいろなお話をして蔵を後にしました。


最後にこれからの季節に関係する事を一つ。

皆さん「お屠蘇」は御存知ですよね。そうです元旦に飲むお酒です。今は「お屠蘇」は、みりんに薬草を浸してから飲みます。なぜみりんが使われるようになったのかは、口当たりが良いという事もあると思いますが、原料にもち米が使われている事が大きく関係していると思います。今現在もち米を使う場面は、お赤飯などに代表されるようにお祝い事の時に使われます。この風習は、平安時代に一般庶民がお祝いの時にもち米を食べていたという事から来ていると言われています。ほんとかどうかは定かではありませんが、人間と歴史のロマンを感じさせてくれます。「福来純 三年熟成みりん」を使ってお屠蘇を作ると、甘さと薬草の味が程よい状態になりほんとに美味しいです。一度お試しあれ。