写真は、繁桝の精米機です。今シーズン新たな機械を導入したそうです。台風の影響で屋根が昨年と変わって一新されたとのことで、写真を撮ったつもりでしたが写っていませんでした。残念です。
繁桝は八女市の中心街にあります。八女市外は、昔から続く宿場町の町並みを色濃く残しており、仏壇屋さんやお茶屋さんがとても多いです。近年は近郊の大型店に押されて影を落としつつあるそうです。これはどこも同じなのですね。
蔵に着くと社長が待っていてくれました。事務所でいろいろなお話をして、そのまま夜の食事へと向かいました。
繁桝の会社にいる事務の江崎さんの実家では、養蜂をしているのですが、一昨年から江崎さんの蜂蜜を販売させてもらっています。一昨年に蔵へお伺いした時、蔵内の食事をする場所でお茶を頂いていた時にあったのがこの蜂蜜で、味をみて一気に気に入って販売させてもらっています。純粋な国産で非常に純度の高さを感じさせる蜂蜜です。私の地では蜂蜜自体そんなに売れませんが、お買い上げ頂くお客様は喜ばれています。
夜の11時頃まで社長と田代常務と酒談義。個室を用意していてくれたので助かりました。娘は元気に個室の中をくるくると遊んでいました。
明日の朝は、3時に起きて蔵内へ行きます。毎度ながらあまり寝れないな。
今、午前4:00。酒蔵の朝は早いんです。結構皆さんは、1本の仕込みを順番に順を追ってやっていると思われがちですが、実際の現場は、いろいろな作業が同時進行しています。蒸し、搾り、麹、仕込と。もちろん日によって搾りが同時の場合があれば、オリ引きが同時の場合もありという感じです。
今回お邪魔した時は、フネでの搾りが始まるところでした。昨年だと袋吊りが見れたのですが今回は1週間ずれてしまい見れませんでした。
今日の書き込みは、このフネの搾りを中心に書きます。上の写真は、フネにもろみを入れた酒袋を積んでいくところを撮った写真です。見るからに美味しそうでしょう。
もうみなさんご存知だと思いますので簡単に書きますが、「搾り」とは、「もろみ」と呼ばれるアルコールを生成する過程の液体を澄んだ液体と粕に分ける作業のことです。現在日本酒の製品化されて呼ばれる搾りの方法は大きく分けて3つおさえておけば良いと思います。「袋吊り」・「フネ」の2つは、手間暇のかかる手作業が多い搾り方。もう一つの「ヤブタ」と呼ばれるアコーディオンみたいな搾り機は、手作業を大幅に低減した搾り方です。
「フナ搾り」は、もろみを入れた酒袋を四角い箱の中にきれいに積んでいきます。最初の頃に流れ出てくるお酒を「あらばしり」、1本の仕込タンクを積み終わったら圧力をかけずにももろみの袋の自重だけで搾ります。そこで澄んだ状態で出てくるお酒を「中澄み」とか「中取り」とかと呼びます。最後に上から圧力をかけて搾るお酒を「せめ」といいます。大きく3つに分けましたが、流れ出てくるお酒の味わいは、1分1秒ごとに違うんです。3つの大きな分け方のお酒は、誰が飲んでも判るくらい違いがあるんですよ。
この「フネ」での搾りは、仕込タンクの大きさにもよりますが、1本のタンクを搾り終えるまでに2から3日位かかるんです。それだけゆっくりとじっくりと搾られるのでお酒にはとっても優しいと思います。ちなみに「ヤブタ式」の搾り機は、大体自動でやってくれて8時間位で搾りあがるでしょうか。
私たちは、簡単にフネで搾ったお酒が良いなどと言ってしまいますが、その裏には非常に大変な労力があるのですね。
写真は、甑(こしき)と呼ばれる和釜でお米を蒸す工程の写真です。5:00頃になって甑による蒸しが始まります。約1時間半位で蒸しあがります。この和釜の中は、家庭での炊飯と同じように同じお米が入っていると思われていませんか。実は、この和釜の中は何層かに分けられてお米が入っています。
例えば、一番下の層に留添え用の精米歩合65%のお米。中段の層には、中添え用の精米歩合60%のお米。一番上の層には、麹米用の精米歩合55%の山田錦といった感じになって蒸されています。更にこの甑の一番下の層には、蒸気があたりすぎてしまうため擬似米というお米の粒くらいのプラスチックの玉みたいなものを敷いている蔵もあります。
いろいろな用途によって分けられていて、昨日も書きましたがいろいろなお酒が同時進行で造られているので、それに合わせられているのです。とっても合理的な面もあるのです。
昨日の続きです。写真は、酒母用の蒸米を自然放冷している所です。
蒸しあがったお米は、甑の中に人が入って木製のスコップのような物で取り出し、適温まで冷まされます。今は、放冷機という機械を使って冷ましますが、繁桝では、ある一定以上の酒質のお酒の麹米は、自然放冷をしています。この自然放冷もとっても大変な作業なんですよ。
私たちがお伺いした時の麹は、スタンダードクラスのお酒の物でしたので、放冷機で種麹をつけ、そのまま麹室へ引き込む作業をしていました。
適温に放冷されたお米は、あるお米はもろみタンクへ、あるお米は麹室へ、あるお米は酒母へと運ばれて行きます。蒸米があがってからの蔵内は、蔵人が走り回っている状態なんです。急いで急いでという感じです。
その傍らで「フネ」で静かにひっそりとゆっくりお酒は生み出されています。以前このブログでも書きました「静と動」です。
実際に蒸米を食べるとどんな感じだと思いますか。普通にご家庭で食べるご飯よりもっと堅めなんですが、芯があるという感じではないです。今回は、精米歩合55%の山田錦の蒸米を食べさせて頂きました。麹菌の付き方、もろみでの溶け具合にとっても影響があるので蒸しもとっても大事な工程の一つなんです。
この位の時間帯になるとお伺いする時毎回感じるのが、福島と福岡の日の出の時間の違いなんです。私たちの住んでいる地方では、この季節、朝6時半から7時頃はもうすっかり明るいですが、福岡は、うっすらと明るい感じなんです。同じ時間にしたら暗いと感じてしまいます。やっぱり日本ってひょろ長いんですね。
写真は、もろみのタンクへ留め添えの蒸米を入れているところです。
これらの作業が終わった後に朝食をとり、再び蔵内へ。
蔵人も朝食をとり、蔵の中も一時小休止といった感じです。この時間を利用してもろみをみせて頂きました。もろみを見ると毎回思う事は、仕込まれて何日目にせよ生きている事、醗酵してるなあという事を実感させてくれます。留添えをして10日目のもろみを飲ませて頂きましたが、今年は、お米の性質なのかどうか私には判りませんが、溶けにくいのかなと感じました。
早朝蔵へ行った時「フネ」での搾りの酒袋の積み上げ半ば頃のふな口酒を飲ませて頂いていたんです。この時点のお酒は、白いオリも多い状態でバランスも悪く荒々しさだけが際立っている状態です。朝食が終わってから飲ませて頂いたふな口酒は、早朝に飲ませていただいたお酒とは全く違い、香り、味わいとも整ってきて旨みもほんのり感じさせる品に変化していました。一昨日書いたように流れ出てくるお酒は、1分1秒違いが明確に感じられます。この間の時間は、3時間くらいでしょうか。
この後は、今年の新酒の生を何種類か味を見させていただき、今年の繁桝の当店のお勧め時期の参考にさせて頂きました。今年の繁桝の味わいは、当然種類によって若干違いもありますが、全体的に例年よりも当たりの柔らかい感じです。もうちょっとシャープさがあっても良いかなとも感じましたが、酸の下支え、新酒特有の渋・苦もあり、熟成にも大丈夫かなと感じました。
来週あたりから山田錦を中心とした今年の新酒の生酒が入荷してきます。山田錦は、55%、50%の純米とアル添酒。雄町も55%、50%の純米とアル添酒です。雄町は若干後になります。どうぞ御期待下さい。
午後からは、飛行機の時間まで若干時間があり、田代常務の用事もあったので柳川を見物してきました。
今回も2日の睡眠時間5時間の強行でしたがとっても良かったです。家にたどり着いたのは22日の午後11時ちょっと前になってしまいました。
余談 翌日は意外と平気で元気でしたが翌々日にきました。年とともに疲れのピークがずれてくるような感じです。
今回の訪問記で撮ってきた写真を何枚かアップします。もし良かったら見てください。
<写真は、蒸米を麹室へ引き込む作業をしているところです。
写真は、蒸米写真は、出麹です。出来上がった麹は、すぐに使うのではなくしばらくおいてから使います。
2006年2月 繁桝
posted by sakeito
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